2007 Fiscal Year Annual Research Report
1970年代初頭以降の国際石油資本による油田支配体制の史的分析
Project/Area Number |
18530252
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
伊藤 孝 Saitama University, 経済学部, 教授 (00151514)
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Keywords | 国際石油資本 / エクソンモービル / RDシェル / 原油・天然ガス / 大水深海域 / 西アフリカ / 旧ソ連邦 / 中東 |
Research Abstract |
本年度は,「研究実施計画」に基づき,第1に,国際石油資本,特に最大企業であるエクソンモービル社の1990年代初頭以降の原油と天然ガスの生産活動について検討し,第2に,1970年代前半の中東,北アフリカ,ラテン・アメリカにおける国際石油資本(特に旧エクソン社)の活動を分析した。 第1の課題についての主な研究成果(結論)は以下の通り。(1)エクソンモービル社は,2006年の時点では世界全体での原油,天然ガスの生産量,確認埋蔵量(原油、天然ガス)で見る限り国際石油資本の中で最大企業の地位を保持した。だが,(2)国際石油資本群の新たな進出対象,活動拠点となったアメリカのメキシコ湾の大水深海域,旧ソ連邦諸国,西アフリカ諸国の3つの地域・海域を全体としてみれば,この時期までに原油と天然ガスの生産事業において他社に対する優位を形成したと見ることはできない。(3)エクソンモービル社がこれら地域・海域への進出において他社に先行,あるいは業界を牽引する企業であったとは言いがたく,大水深海域などで用いた技術,操業方法についてもその開発,導入において他社に対する先駆性,あるいは優位性を有したとはいえない。これらの諸点はいずれも従来解明されたことのない重要な事実と特徴である。 第2の課題については,いまだ明瞭な結論には到達していないが,(1)1970年代前半時点で,サウジ・アラビア政府(国営企業)が国内の油田支配権の確立を踏まえて,エクソンモービル社の拠点市場であるアメリカへの進出(原油精製,製品販売)を構想したこと,(2)ヴェネズエラ政府が現地の油田等の国有化に際して,エクソンモービルなど各社に対して,補償金額として総計5億ポンド以上を提示したこと,などの事実が明らかになった。これらも,従来得られなかった重要な成果である。
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