2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦後経済復興期〜高度経済成長期の日本における工業開発と農村社会
Project/Area Number |
18530253
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
沼尻 晃伸 Saitama University, 経済学部, 准教授 (30273155)
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Keywords | 工業開発 / 農村 / 公害 |
Research Abstract |
1、本年度の研究は、第一に、戦後経済復興期〜高度経済成長期に工業開発が取り組まれた地域における資料収集調査及び関係者への聞き取り調査、第二に、工業開発を受け止めた農村社会の対応に関する把握、とりわけ兵庫県尼崎市、静岡県三島市、神奈川県小田原市などの事例研究の深化であった。 2、資料収集については、全体動向に関して、国立国会図書館のほか、名古屋、大阪、広島などの公立図書館において、事例研究について兵庫県尼崎市に関して尼崎市立地域研究史料館、尼崎市立図書館など、静岡県三島市に関しては、三島市立図書館で資料の撮影・複写『を行った。あわせて今年度は、本研究課題に関わる業務に実際に携わっていた方で、現在も健在で聞き取りが可能な方が急速に減少している緊急性に鑑み、聞き取り調査を重視して進めた。尼崎市で6名、三島市で2名の方から聞き取りを好い、その過程で発掘された一次史料の収集(写真撮影)を行った。 3、農村社会の考察に閲しては、なお研究は継続中であるが、今年度は2で指摘した、聞き取り調査に重点をおいたため、事例研究を深化させる形で研究を進めた。その結果を3点にまとめれば、第一に、都市郊外の工業開発に関して、1950年代の農村社会では工業開発に伴う公害問題が自覚されながらもその対応は主に旧村レベルで行われており自治体が直接関与するケースが少なかった点、第二に、1960年代に郊外住民や農民から自治体へ工業開発に伴う問題解決のたあの要求が出された結果、自治体が国・県の政策枠組のなかで、住民生活の観点から水や大気などの維持を政策課題と意識し始めた点、第三に、他方で日本の場合、企業内の福利厚生が労働者とって重要な意味を持っていたため、二業開発に伴って流入した労働者意識と自治体の公的政策とにギャップが生じた点が挙げられる。
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