2006 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀中国経済と華僑送金:国際資金移動とその影響に関する歴史的検討
Project/Area Number |
18530255
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
城山 智子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 助教授 (60281763)
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Keywords | 華僑 / 送金 / 中国 / 香港 / 為替リスク / 広東 / グローバル・ハウスホールド |
Research Abstract |
19世紀末から20世紀半ばに掛けて、香港で華僑送金を取り扱った馬叙朝文書(香港大学図書館所蔵)の調査と分析を行なった。馬叙朝は、広東省台山県出身で、香港で絹織物輸出業を始め、保険や銀行業を営んだ企業家である(香港名人年鑑)。それらの事業の一端として、馬は故郷の台山を中心とする地域出身者、海外(特に北南米が多い)へ出稼ぎに赴いた者と、その家族との間の手紙のやり取りと、送金を扱った。香港政庁の行政官であったジェームズ・ヘイズにより収集され、香港大学に起草された馬叙朝文書は、帳簿、手紙、契約書、その他証書等からなり、中でも、帳簿と手紙は華僑送金の実態を示す、極めて貴重な資料と考えられる。本年度は、まず、帳簿に記録された資金の動きを再構成し、資金移動の経路、海外と香港、香港と中国本土(広東)との間の為替リスクへの対処、といった点に考察を加えた。その結果、海外の出稼ぎ者は、現地通貨と香港ドルとの間では、まず、香港ドル建ての手形を現地の銀行で購入して送金することにより、将来の為替レート変動に伴うリスクを、回避する場合が多いこと、一方、香港と中国本土の間では、一時資金を香港の馬叙朝が利子付で受け入れ、為替レートが有利になる状況を待って、送金する場合が見られることが確認された。こうした一次資料に基づく実証研究を踏まえて、グローバル・ハウスホールドに関する国際シンポジウム(2007年1月 於ソウル 日本学術振興会人文社会振興プロジェクト協賛)に参加し、国境を越えて展開する家族・家計といった問題について、国際政治学、社会学、ジェンダー研究など、他分野の研究者と意見交換を行なった。
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