2008 Fiscal Year Annual Research Report
ヨーロッパ統合の歴史と経済理論(1955年-1965年)-フランスを中心に
Project/Area Number |
18530257
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
石山 幸彦 Yokohama National University, 大学院・国際社会科学研究科, 教授 (90251735)
|
Keywords | ヨーロッパ統合 / 経済統合 / 欧州石炭鉄鋼共同体 / 共同市場 / 自由競争と規制 / 鉄鋼業 |
Research Abstract |
平成20年度は、前年度に行ったヨーロッパ統合の実態に関する実証分析を継続して実施した。それによって、1950年代後半から1960年代前半までの共同体の鉄鋼共同市場における鉄鋼取引の実態と戦後復興・発展との関係を、フランス鉄鋼業を中心に解明した。 戦後のフランスにおいては、政府・計画庁が中心となり、経済の近代化・発展をめざす「近代化設備計画」が実施され、鉄鋼業を含む経済全体の設備投資と生産拡大をめざしていた。ただしそこでは、政府・財務省によって物価上昇が厳格に抑制され、インフレ対策が採られていた。多くの国内産業に鉄鋼製品を供給する鉄鋼業も、その影響を受けて価格を容易に引き上げることはできなかった。 その結果、戦後成長期の物価上昇局面にもかかわらず、鉄鋼価格は相対的に低く抑えられ、フランス鉄鋼業界は十分な収益を得られず、設備投資資金の調達に苦しんでいた。この資金難が近代化設備計画にも悪影響を及ぼし、鉄鋼業の生産力拡大を遅らせていたのである。すなわち、実質的には同国政府の経済政策によってコントロールされていたフランス鉄鋼業は、鉄鋼価格上昇が政策的に抑制されたために、共同市場においては西ドイツやベルギーの鉄鋼業に対して不利な競争を強いられることとなった。 上記の成果を雑誌論文「第2次近代化設備計画の進行と鉄鋼不足問題の再燃」として発表した。なお、これらを含む成果を『ヨーロッパ統合とフランス鉄鋼業』として日本経済評論社から刊行する作業を進めている。
|