2006 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスにおけるエスニック・マイノリティ女性の労働とその変容:1951-1979
Project/Area Number |
18530267
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00192675)
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Keywords | ジェンダー / 移民 / エスニシティ / 女性労働 / パートタイム労働 / イギリス |
Research Abstract |
主な成果は以下の2点である。まず、これまでの成果をまとめ、‘Women Immigrants for Domestic Staff in Hospital : Gender and Ethnicity in Labour Market in the mid-Twenties Century Britain'と題する報告を06年9月にロンドン大学で行なわれたAnglo-Japanese Conference of Historiansにて報告し、多くのコメントから今後の研究への示唆を得た。また、複数のマイノリティ・グループを対象とする研究視角の有効性を確認することができた。第2は、06年9月にロンドンのNational Archivesにおいて1950年代、60年代の労働省、植民地省資料を収集した。また国内において国会図書館が所蔵する統計資料などを収集した。 本年度の研究の結果は以下のとおりである。 (1)移民政策に関する1962年移民法を、イギリス移民政策史の画期と見なしている点は一致しているが、移民のジェンダーについてほとんど言及していない。しかし、実際にはアフロカリビアン移民の性比はほぼバランスが取れていた。移民問題が政治化するのは常に「男性移民」をめぐってである。 (2)1966年の10%サンプル・センサスの分析から、移民女性の労働についてそれぞれ出身国別に、労働市場の異なった部分に位置づけられ、特定の職に集中していたことがわかった。移民女性全体の労働市場が存在したわけではなく、それぞれの出身国およびその背後にある女性の職業への考え、女子教育観および、女性の職業能力という供給側の事情、受け入れるイギリス社会における能力や適性に関する偏見や期待によって労働市場は分断されていた。 (3)移民女性と白人イギリス人女性のパートタイム労働との競合関係であるが、サーヴィス業の一部など見られるものの、カラード労働者への偏見などのために、多くの場合異なった労働市場に属していたと推測される。
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