2007 Fiscal Year Annual Research Report
第二次大戦後のドイツにおける社会格差に関する研究-日独比較の試み-
Project/Area Number |
18530270
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山井 敏章 Ritsumeikan University, 経済学部, 教授 (10230301)
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Keywords | 高度成長 / 労働協約 / 職務評価 / 女性労働 / 社会移動 |
Research Abstract |
この間執筆を続けてきた論文「戦後ドイツの社会変動」を完成した。ここでは、戦後の高度成長期に、熟練・半熟練・不熟練という労働者の伝統的3区分を基礎とする労働協約の賃金グループの再編が進められ、職務内容の難度を規準とする職務評価にもとづく賃金グループの設定に転換していくプロセスについて論じた。労働協約の賃金グループについてはもうひとつ、女性に対する差別的賃金規定の撤廃が重要な争点となった。上記論文では、高度成長期における女性就労の急増という状況と絡めつつ、差別賃金撤廃の問題についても論じた。ところで、職務評価を基礎とするいわゆる「職務給」の導入は戦後の日本でも図られたが、わが国では結局定着せずに終わり、むしろ「能力給」が主要な賃金形態として普及していく。その理由の探求を通じて日独労使関係の比較を行う論文の作成準備を現在進めている。もうひとつ、19/20世紀のドイツにおける社会移動(階層間移動)に関する研究史のサーベイを行い、これも論文としてまとめつつある。社会移動は、所得格差と並び、本研究課題のテーマである社会格差の重要な要因である。論文では、19世紀における産業化の進展は社会移動にどのような影響を及ぼしたのか、20世紀に入って何らかのトレンドの変化があったのか否か、日本における動きとはどのような違いがあるか、などの諸問題が検討される。 上記諸研究の資料収集のため、2007年10月にドイツに渡航し、ボンのFriedrich-Ebert-Stiftungおよびコブレンツの連邦文書館で作業を行った。また、同年9月にドイツ現代史学会で行った講演「1848/49年革命と社会主義」は、直接には19世紀を対象とするが、19世紀の社会主義との対比で戦後ドイツの社会民主党についても論じ、戦後の社会格差をめぐる政治状況について考察を加えた。
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Research Products
(2 results)