2009 Fiscal Year Annual Research Report
第1次世界大戦と中東の生成--イランの為替と金融を中心として--
Project/Area Number |
18530271
|
Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
水田 正史 Osaka University of Commerce, 総合経営学部, 教授 (80219633)
|
Keywords | イラン / トルコ / イギリス / ロシア / 第1次世界大戦 / 帝国主義 / 金融 / 中東 |
Research Abstract |
国土が「ヨーロッパの戦争」の戦場になってしまったイラン。その混乱は為替の面にも現象した。イラン通貨の相場が上昇したのである。これは、イランに外国通貨の供給過剰が存在したためであった。ロシア兵たちはルーブルで俸給を支払われていたし、イギリスはイラン人たちを味方に引き入れるためにカネをばらまいた。他方、これら外国通貨への需要は大きくはなかった。イラン通貨ゲラーンの為替相場の上昇は、投機家たちをしてゲラーンを退蔵せしめた。ロシアのルーブルはイラン商人たちから歓迎されざるものになった。イギリス、ロシアがイランで自らの通貨を支出すればするほどゲラーンに対する価値は下がる。これを解決するために協商側はイランへの銀地金輸入額を増やしてゲラーン供給を増やそうとした。銀地金をイラン政府に供給しコインを発行する権利はペルシャ帝国銀行が独占していたが、1914年、ロシアはこれをペルシャ割引貸付銀行にも分け与えるよう求め、この旨、イギリス・ロシア間で合意が成立した。1916年3月、ロシアは、テヘラーン造幣所の造幣能力不足を理由に、ロシアがコインを造幣し軍票を発行すると述べた。ペルシャ帝国銀行は、造幣能力は十分であると請け合ったのだが、ロシアは同行に地金を供給しようとはしなかった。イギリスにしてみれば、ロシアが供給しなかった銀地金はロシアがイギリスの信用でイギリスで入手したものであり、これはペルシャ割引貸付銀行によるペルシャ帝国銀行の土台の掘り崩しであるとして不快感をあらわにした。結局、同年6月末、イギリスは銀地金輸入のためのロシアへの信用供与を終わらせた。
|
Research Products
(1 results)