2008 Fiscal Year Annual Research Report
わが国企業のペイアウト政策に関する定量的・定性的研究
Project/Area Number |
18530278
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
砂川 伸幸 Kobe University, 経営学研究科, 教授 (90273755)
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Keywords | ペイアウト / 株主優待 / アナウンスメント効果 / 株式流動性 |
Research Abstract |
今年度は,企業のペイアウト政策の中で,株主優待に焦点をあて,同制度の導入が株価や流動性に与えるインパクトを実証分析した。株主優待制度は小口株主に有利な制度であるため,同制度を導入した企業の株主数は増加し,流動性が高まると考えられる。研究では,数値例を用いてこのことを示した上で,1998年1月一2005年12月の期間に株主優待制度を導入した172社をサンプルとして,導入前後の株価や流動性について検証した。主な実証結果は次の通りである。第一に,標準的なイベント・スタディを行った結果,株主優待導入の発表を行った企業の株価は上昇することが分かった(正のアナウンスメント効果がある)。第二に,優待導入の前後において,サンプル企業の総株主数と個人株主数は有意に増加していることが明らかになった。一旦増加した総株主数と個人株主数は,導入後2〜3年を経た後にも減少していないことが分かった。さらに,ビッド・アスク・スプレッドや実行スプレッドで測定した流動性も改善されていることが確認できた。株主優待の導入は,短期的にも中長期的にも,個人株主数や総株主数を増やし,流動性を改善する効果がある。第三に,株価のアナウンスメント効果と株主数や流動性の改善の程度の間には,正の関係が観察された。株式市場は,株主優待の導入によって改善する流動性(あるいは増加する株主数)を反映する形で,株価をポジティブに評価したと考えられる。このように,本研究は,インタビュー調査などで「個人株主数を増やすために株主優待を導入している」という企業の主張を裏付けただけでなく,株主優待が株価に好影響を与えるペイアウト政策の一つであることを明らかにした。
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