Research Abstract |
平成19年度における研究実績の概要は以下の通りである。 1.IPO企業の価値についての事前的不確実性が,投資家にとって大きくなるほどアンダープライシングも大きくなるというRitter(1984)とBeatty and Ritter(1986)の仮説をJASDAQにおいて検証した。ここでは,不確実性の代理変数として,上場までの経過年数(会社年齢)と市場調達額を考え,これらが大きければ不確実性は小さく,アンダープライシングも小さいと考えた。情報・通信業では,経過年数と上場時調達金額が有意で,しかも符合が一致していた。しかしながら決定係数は,0.1276で低い水準であった。 全産業では,経過年数と売上高が,統計的に有意となった。すなわち,経過年数や上場一年前の売上高が大きくなると,不確実性が減少しアンダープライシングが小さくなることが分った。ただし,決定係数は0.0559と低い水準であった。すなわち,IPO企業の価値についての事前的不確実性が,投資家にとって小さくなるほど,アンダープライシングも小さくなるというBeatty-Rock仮説を支持している。 2.日本において,新規株株式公開を引き受けるアンダーライターの違いによって,アンダープライシングの差は生じないといわれているが,1997年-2007年のIPOのデータにおいては,かなり大きな開きがあった。 アンダープライシングの平均値で,三菱UFJ証券の平均値が69.88%であるのに対し,国際証券と日興証券はそれぞれ23.59%と39.76%であった。Carter, et. al.(1998)によると,評価の高いアンダーライターによって引き受けられた新規株式公開は,アンダープライシングが小さくなると述べている。これに対して,野村證券と日興證券では,統計数値が反対の結果となった。野村證券では,主幹事持株比率が高くなると,アンダープライシングも高くなる傾向にある。反対に,日興證券では,主幹事持株比率が高くなると,アンダープライシングは低くなる傾向にある。したがって,日興證券の方が理論的に整合的な動きをしていることが明らかとなった。
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