2009 Fiscal Year Annual Research Report
研究開発・知的財産戦略における限定合理性の役割の研究
Project/Area Number |
18530295
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
和田 哲夫 Gakushuin University, 経済学部, 教授 (10327314)
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Keywords | 知的財産権 / 研究開発戦略 / 特許引用 |
Research Abstract |
本研究では、特許制度を利用する上で限定合理性が果たす役割を探求するため実証分析を行った。企業戦略や行動を規定する累積的な研究開発環境の測定方法として、従来から広く使われてきた特許引用データ自体に限定合理性に由来する歪みが存在するのではないか、という予想に基づく分析に今年度は注力した。 前年度に引き続き、経済産業研究所の実施した発明経過に関する調査をもとに分析を行い、成果を得た。ある特許が引用している先行特許のうち、実際に重要な先行技術として依拠しているものを発明者に選んでもらうアンケートデータの分析から、引用されている特許に対して審査官が付した被引用数(前方引用数)が説明力を持つことが、昨年度研究において判明していた。今年度はそれに加えて、クラスタ係数も発明者の認識に説明力を持つこと、これが社外引用関係でも成り立つこと、が統計的に確かめられた。クラスタ係数(clustering coefficient)には複数の定義があるが、ここでは特許引用関係にある2つの特許が、可能な組み合わせの中で推移的トリプル(transitive triple)を実際に形成している割合として定義している。社外引用関係ですら、引用ネットワークはランダムネットワークではなく、技術要因によるクラスタ化だけでなく、認識能力の限界すなわち限定合理性によるデータのクラスタ化の影響があることが示唆されている。特許引用を計測手段として用いる既存の多くの研究では、暗黙のうちに個々の引用の付与が確率的には均質、相互に独立という仮定をおいており、引用回数を単純にカウントすることにより技術重畳関係などを計測しているが、それら実証研究が依拠する計測の前提を問い直す必要性が明らかとなった。
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Research Products
(4 results)