2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
八重倉 孝 法政大学, 経営学部, 教授 (90308560)
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Keywords | 業績報告 / 包括利益 / 純利益 |
Research Abstract |
本研究の目的は、予測価値の観点から業績指標としての純利益と包括利益の比較を行うことにある。本研究で検討の対象とするのは、現在国際会計基準審議会がその「財務諸表の表示プロジェクト」において導入を図っている包括利益と、(国際会計基準審議会がその廃止を目標としている)実現概念に基づいて計算された純利益、そして包括利益と純利益の差額である「その他包括利益」である。本研究では、投資家が投資対象としての企業の本源的価値を推定するためにもっとも適した業績指標は何か、という観点から純利益と包括利益の比較を行う。本年度は関連する先行研究の整理とシミュレーション分析を行った。 本研究ではシミュレーションをもちい、業績指標の有用性の測度として、それぞれの業績指標が持つ予測価値をもちいた。はじめに、シミュレーションを用いて純利益と包括利益の予測能力について比較を行うために、企業の将来キャッシュフローをランダムに生成し、そこから計算される純利益と包括利益の性質について両者の予測可能性について比較を行った。次に、純利益と(国際会計基準審議会が支持する)包括利益を比較するために、上記のモデルに金融資産を導入した。シミュレーションにおいて、金融資産は毎期公正価値で再評価されるが、その再評価差額は純利益に算入しない(いわゆる資本直入、現行基準での純資産直入)ことにした。すなわち、「その他有価証券」の公正価値の変動をモデルに織り込んだシミュレーションを行った。 その結果、将来の業績予測について、純利益の方が包括利益よりも予測しやすいことを確認した。この結果は、投資家にとって、純利益の有用性が包括利益のそれよりも高いことを意味する。すなわち、投資意思決定有用性の観点から、国際会計基準審議会が主張するような、純利益を廃止して包括利益のみを表示することは正当化できないという事実が明らかとなった。
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