2007 Fiscal Year Annual Research Report
日韓の問題解決型行動におけるソーシャル・キャピタル転換メカニズムの比較研究
Project/Area Number |
18530374
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡邊 登 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 教授 (50250395)
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Keywords | 住民投票 / 市民社会 / 公共圏 / 政治文化 / social capital |
Research Abstract |
今年度は、扶安郡レベルでの住民投票運動グループのリーダー層への聴き取り調査を継続するとともに、邑・面(さらには里)単位の地域レベルでの活動層への聴き取り調査を行い、今回の運動が地域社会のsocial capitalのどのような変容を促したのかを検討した。運動が成功した要因として、その初期段階さらに展開過程においても宗教指導者、農民会、全教祖、環境運動連合のセマングム干拓事業反対運動での社会的ネットワークが運動基盤として有効性をもったことは間違いないが、今年度の調査で明らかになりつつあるのは、郡レベルでの活動を支えためが、邑・面レベルでのそれであったということである。地域によって状況は異なり、既存の秩序構造との協調・妥協・折り合い・対立関係の中で、各面単位の対策委員会活動が繰り広げられ、それが郡全体の反対運動の強化・拡大を裏づけていくとことが明らかになりつつある。そして、それとともに、この展開・拡大過程で女性たちの社会的ネットワークの活性化・拡大が運動の成功に大きな意味を持ったこと、それ以前は表舞台に出ることはなかった「声なき声」である女性たちの、面レベルでの地道な情宣活動、さらに全体集会での積極的なパフォーマンス(剃髪等)は対内的にも対外的にも運動を展開する上で大きな役割を担ったこともあらためて確認できた。 ただし、問題解決過程において乃至その結果として現出しつつある、社会諸関係及び政治文化の変容メカニズムについては、より一層の丹念な邑・面単位の各種リーダー層、サブリーダー層への聴き取り調査が必要である。それによって面・邑単位の日常的社会関係に対して、今回の経験が何を産み出し、何を産み出し得ないのか。特に今回触れられなかった氏族会との関係なども踏まえて調査を継続しなければならない。
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