2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本における世論調査の「制度化」に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
18530377
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
井川 充雄 Rikkyo University, 社会学部, 教授 (00283333)
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Keywords | 世論調査 / GHQ / マス・メディア / 占領政策 |
Research Abstract |
占領期には,大手の新聞社が相次いで世論調査担当セクションを設置した。また,新興の新聞・雑誌の中にはタイトルに「世論」「投書」「声」といった単語を用いるものが少なくなかった。これらの現象は,「世論」の噴出とでも言えるだろう。この背景の1つとして,ポツダム宣言では「日本国国民の自由に表明せる意思に従い平和的傾向を有し且責任ある政府」樹立するものとされ,そうした日本国民の世論を媒介するものとして活字メディアが希求されたことがあげられる。 そこで本年度は,占領期に書かれた各種の記録を用い,当時,世論調査がどのように人々に認識され,受容されていったのかについて検討を行った。 新聞・雑誌などのメディアは,手探りでさっそく世論調査に乗り出すが,初期においては質問紙を用いた調査は回収率が総じて低く,調査員が苦労したことが,いろいろな記録に残されている。これはまだ一般の人々にとって世論調査は異質で不慣れなものであったからである。そもそも戦時下を過ごしてきた一般の国民は,自らの政治的意見を表明するという経験が乏しく,むしろそれを避けることが習慣となっていた。そうした人々にとって,世論調査に協力するなかで自らの政治的意見を表明することは新鮮な体験であり,それを通して自らの政治的意識を顕在化させることが多かった。そして世論調査の意義も次第に認識するようになったのである。こうして世論調査は,次第に戦後の政治過程の中に定着し,「戦後民主主義」における政治の回路として確固とした基盤を築いていったと考えることができる。
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