2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本における世論調査の「制度化」に関する歴史社会学的研究
Project/Area Number |
18530377
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
井川 充雄 Rikkyo University, 社会学部, 教授 (00283333)
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Keywords | 世論調査 / GHQ / マス・メディア / 占領政策 |
Research Abstract |
研究最終年度にあたる本年度は、「世論調査」の技法が精緻になって社会へ浸透していく過程と現実の政治情勢との関連について、米国公文書等の資料に基づいて検討を行った。 第2次世界大戦後、アメリカは東側に対する心理的な攻撃を行う一方で、同盟国や中立国に対してもつねにプロパガンダを行った。特に占領下の日本では、GHQは、日本の非軍事化と民主主義の理念の定着をはかる一方で、冷戦の進展および米ソ対立の固定化という国際情勢の変化に対応して、日本を自由主義陣営に引き入れ、極東における同盟国に位置づけようとしてきた。アメリカ政府は、そうしたプロパガンダ・キャンペーンを行うのと同時に、その効果を測定するために、各国においてさまざまな世論調査を実施した。占領下の日本では世論調査機関の育成に尽力したが、それは日本に民主主義を根付かせるためという側面とともに、日本の世論を絶えず監視し、反米的な世論が高まりそうな場合には先手を打ってそれに対処するためのものという側面があったと考えられる。 したがって、「世論調査」という調査手法は、その成り立ちからして決して政治的に中立なものではない。プラグマティックな色彩の強いアメリカの社会科学研究は、絶えず政策科学的な色彩を帯びている。それゆえ、戦後の世論研究や「世論調査」も、冷戦体制の枠組の中で発展し、その強い影響のもとにあったことが資料から確認できる。 今後、こうした視点から研究史を見直し、知の社会的編成のあり方を歴史的に問い直す作業が、ますます重要となるだろう。
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Research Products
(2 results)