2007 Fiscal Year Annual Research Report
退職移行期にある中高層の社会的アイデンテティ再構過程に関する研究
Project/Area Number |
18530382
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
平 英美 Shiga University of Medical Science, 医学部, 教授 (10135501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 厚子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 准教授 (10324568)
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Keywords | 定年退職 / 中高年層 / 多元的アイデンティティ / アクティブ・エイジング / セカンド・モラトリアム |
Research Abstract |
19年度は,昨年度に実施した調査データの分析が主な研究内容であったが,次第に,現代の定年退職者像が明らかになりつつある。 1.質問紙調査…18年度実施した調査は,当初の見込みを超える回収率を達成した。そのため一部データの入力が間に合わず,本年度に持ち越すことになった。調査に協力をいただいた企業や商工会議所からの問い合わせが多くあり,中間報告書の作成を急ぎ,19年の秋には,要望先に配布した。また,一部商工会議所では報告講演もさせていただいた。あくまでも中間段階であるが,次のような諸点が明らかになった。(1)当初の予想と異なり,企業規模や業種の違いによる退職者の意識や行動の差は小さいか,ほとんど見られなかった。(2)退職後の経済的格差は見られるものの,これも意識や行動の差に直結していない。(3)予想に反して,商工会議所の所在地別に差が見られたが,その最も大きな規定要因は居住地域の違いに基づくものであった。(4)退職後の人間関係の中で配偶者との関係が重要である。(5)これまでの調査同様,健康に関わる要因では,精神的健康が最も意識や行動との相関が高い。 2.聞き取り調査…昨年度実施した守山市のボランティアグループのデータ(テープ起こししたもの)をもとに,定年退職者の言説を分析しつつある。やはり,これまでの退職者とは異なる像が浮かび上がってきている。-例えば,現役時代に培った知識や技術はボランティア活動の中で常に役立つとは限らないが,現役時代に身につけた生活信条やエートスはほとんど変化させておなれない。ただし,多くの人が退職生活という新しい環境に馴染むために「空白」の時期を過ごしていおられる。いわば青年期に対応するモラトリアムが存在している。また,アンケート調査でも明らかなように,退職者たちは配偶者との関係に非常に気を遣っておられるのだが,その上で距離を置くことの大切さを述べる人もおられた。
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