2006 Fiscal Year Annual Research Report
社会ネットワークのミクロ・マクロ問題と動学問題の研究
Project/Area Number |
18530387
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 寛 九州工業大学, 工学部, 教授 (10037004)
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Keywords | ネットワーク / ゲーム |
Research Abstract |
本研究の一般的な課題は、社会学のミクロ-マクロ問題と動学問題にたいする一つの解答の道筋をつけることである。特に社会ネットワークに焦点をおき、その理論をミクロ-マクロ問題と動学問題の観点から発展させようとするものである。この課題は、3つの下位の課題からなり、平成18年度の実施計画では、それらにかかわる既存の研究(理論と方法)の整理が目標であったが、次のような検討結果と今後の課題が明らかになった。 1.社会ネットワーク構造の制約のもとの社会過程の理論 Cook=Emerson=Gilmore=Yamagishiらのネットワーク制約下の資源配分による権力分布の予測は行為論的ではない。ColemanやMarsdenは行為理論を内包する均衡モデルであるが、資源概念が恣意的である。Bonacichはゲーム理論を導入しようとしたが、それは協力型の提携ゲーム(解としてコアを採用)である。これらをふまえて、ネットワーク制約下の社会過程を非協力ゲームとしてとらえることが今後の課題である。 2.社会ネットワーク構造の変動にかんする理論 Holland=LeinhardtからWassermanにいたる確率過程モデルを主として吟味したが、多くはマルコフ性を仮定しており、変化の圧力は互恵性などの心的特性である。構造情報を考慮し、かつ行為論的な理論へ向かう道の一つと考えられるネットワーク・ゲームの吟味と応用が今後の課題である。 3.P*系の計量モデル Holland=LeinhardtからWasserman=Pattisonにいたる、いわゆるp*系の計量モデルを吟味した。パラメータの推定方法のあいまいな部分、多重ネットワークの場合のモデル、そして外部属性の影響を考慮するモデルを検討することが今後の課題である。
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