2008 Fiscal Year Annual Research Report
社会ネットワークのミクロ・マクロ問題と動学問題の研究
Project/Area Number |
18530387
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
井上 寛 Kyushu Institute of Technology, 工学研究院, 教授 (10037004)
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Keywords | 社会ネットワーク / ゲーム理論 |
Research Abstract |
研究実施計画にしたがい、まず先行研究の再吟味を前年度より継続した。とくに、Cook=Emerson=Gilmore=Yamagishiらの交換ネットワークの権力分布、Colemanらのネットワーク制約のもとでの交換の均衡モデル、Bonacichの提携ゲームとしてのネットワーク社会過程のモデル、さらにRapoport、Fararo、Skvoretz、Coleman、Yamaguchi、Holland=Leinhardt、Wassermanらの確率過程として表現されるマルコフ系のネットワークの生成と変動のモデル、Zeggelinkらが開発した行為論的要素をもつ非マルコフ系のシミュレーション・モデルなどを吟味した。今年度は、新たに一方でHeider、Harary、Flamentらによって構築された符号グラフのバランス理論の読み直しを試み、具体的な事例を通して理論のインプリケーションを考察した。バランス度を上昇させることは、必ずしも構造のサイズを維持することではなく、解体によってバランス度を向上させること、また従来の理論の範囲では、構造変動の経路が一意に定まらないことを明らかにした。他方で、新しいゲーム理論の一つであるJackson=Wolinkyらのペアワイズ安定という均衡概念をもつネットワーク・ゲームの理論の吟味を進めた。それは秩序問題とミクロ・マクロ問題にたいする有効な視点を提供することを確認した。ただし、通常のペアワイズ相互作用は完備グラフで安定するのみであり、現実のネットワークと乖離する。そこで、符号付でかつ資源の流通のあるネットワークを対象に、バランス理論とゲーム理論の接続の可能性を研究し、バランス構造の変動を行為論的に再構築する作業を通して、アクターの相互作用とネットワーク構造の変動を同時に扱うモデルの見通しをえた。
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Research Products
(1 results)