2007 Fiscal Year Annual Research Report
変動する雇用慣行下における職業資格の効用に関する社会学的研究
Project/Area Number |
18530418
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿形 健司 Doshisha University, 社会学部, 准教授 (10252298)
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Keywords | 職業資格 / 専門職 / 職業経歴 / 学歴 |
Research Abstract |
本研究と関連する研究プロジェクトにおいて、ホームヘルパーという特定の資格をとりあげ、職歴形成と資格取得との関連を検討した。その結果、高学歴者ほど、(1)当該資格を取得する確率が高く、(2)資格を「利用」した職に就いている人の比率は低いことが明らかになった。このことは、学歴、資格取得、資格の職業への活用の三者間には複雑な関係が存在することを示唆している。 今年度は上記の知見をふまえて、看護師資格が職歴形成に及ぼす影響について質問紙調査を実施した。多様な職業資格のなかから看護師資格を取り上げた理由は以下の通りである。初職への入職では学歴が大きな効果をもつが、転職市場では職業能力を客観的な形で提示する必要がある。職業資格はその一手段として用いられている可能性がある。先行研究では、日本の企業組織は内部労働市場型であるため転職が少ないことが明らかにされている。これに対し、職業資格を必須とする専門職では、資格が一定の客観的能力を保証するため、外部労働市場での移動が比較的容易である可能性がある。また、高齢化が進むわが国ではここ10年の間に医療・福祉業界がめざしく発展し人手不足が問題となっている。労働者にとっては転職によるキャリアアップの機会に恵まれた10年だったといえよう。また、男性と比べて女性は資格の効果が高いという研究成果もある。そこで、より労働市場の流動性が高く、かつ職業資格を必須とし、さらに女性が多い職業として、看護師資格を対象として選択した。 対象者のキャリア形成過程を明らかにするために、職歴情報を丹念に尋ねる質問紙を設計した。調査は、某看護学校の全面的協力を得て、所在が確認できる全卒業生を対象に郵送調査法にて実施した。当初計画に比べて実施が遅れたのでデータに基づく結果を示すことはできないが、次年度の早い段階にデータセットを完成させて分析を進める。
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