2008 Fiscal Year Annual Research Report
変動する雇用慣行下における職業資格の効用に関する社会学的研究
Project/Area Number |
18530418
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
阿形 健司 Doshisha University, 社会学部, 准教授 (10252298)
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Keywords | 労働市場 / 専門職 / 職業経歴 / 就業継続 |
Research Abstract |
本研究の目的は、職業資格が労働市場において果たす役割を明らかにしようとすることである。近年、終身雇用や新規学卒一括採用などの、従来一般的とされてきた雇用慣行がしだいに変化してきている流動性の増す労働市場において、個人は、キャリア形成のためにみずからの職業能力を提示できることが重要になりつつある。一般に、職業資格は職業能力の指標とみなされているが、はたして職業資格は労働市場においていかなる価値を有するのかを具体的に把握する必要がある。その手始めとして本研究は、取得者数が多い専門職資格である看護師資格に焦点を絞り、ある看護学校の卒業生全体を対象に質問紙調査を実施した。調査対象となった看護学校の卒業生は調査時点で2,438名である。郵送調査法により調査を実施した結果、1,132票の有効票が回収できた(有効回収率46.4%)。以下では職業経歴に関する分析結果の一部を示す。 就業継続についてみると、現在「看護職」として就業している者のうち、一度も仕事を中断したことがない者の比率は62%である一方で、現職が「看護職」以外である者のうち、一度も仕事を中断したことがない者の比率は44%であり、後者に比べて前者は有意に高いことが確認できる。さらに、現在「看護職」として就業している者のうち、一度も仕事を中断したことがない者のなかで、初職と同じ従業先に勤め続けている者は4割であり、残りの6割は従業先の変化を経験している。これらのデータは、看護師資格が、1)就業継続に一定の効力をもつこと、2)転職(従業先の異動)を繰り返すことがあっても就業自体には中断をもたらさない効力をもつこと、を示している。職業資格が労働市場において一定の役割を果たしていることを例証する結果だといえる。
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