2007 Fiscal Year Annual Research Report
個別的労使関係の研究-従業員個人と企業間・従業員同士の新たな調整システムの研究
Project/Area Number |
18530423
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野瀬 正治 Kwansei Gakuin University, 社会学部, 教授 (20340896)
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Keywords | 社会学 / 経営学 / 社会法学 / 民事法学 / ADR / 法社会学 / 労使関係 / 労働法 |
Research Abstract |
当年度の取り組みは、前年度の研究を踏まえて量的調査を実施し、示唆を得ることである。具体的には次のとおりである。 1.従業員個人と企業間および従業員同士の調整に影響を与える「規範」についての概念整理。/現在わが国は、競争原理に基づく新自由主義的規範および共同体的規範、の狭間で、国際的コスト競争の現実に対応すべく変容しているが、調査結果から、2つの流れに分岐して進行していることがわかった。 2.性質により2分できる「従業員個人と企業間および従業員同士の調整方法」。/「従業員個人と企業間および従業員同士の調整」のあり方は、その特性から2つのグループ(「当事者間で交渉の度合いが高い」グループ:研究者・技術者など、と「当事者間であまり交渉の余地がない」グループ:生産オペレーターや一般事務職など)で同一ではない。調査結果で前者の特徴をひとつ挙げると、職種別の人事制度が個人のモラール向上に(仕事を通して)寄与している点、また両者に共通している特徴をひとつ挙げると、調整のあり方(相談窓口等)は、トラブル内容、当事者の立場により異なるとともに紛争解決の程度に影響を与えている点、であった。 3.調査結果/特に、企画・研究業務に携わる者(前項における前者のグループ)に関わる調査結果で、企画担当者および研究者等に関する処遇・企業風土について企業調査結果で留意すべき点をいくつか挙げると、次のとおりである。(1)業績主義が浸透しているものの、それと同程度には個人単位による雇用管理は浸透していない。(2)業績主義とはいっても集団的な業績主義が根強い。(3)しかし、業績主義が徹底している企業では、個人単位の制度が浸透している。(4)業績主義の程度が強い企業では、個人を重んじる企業風土の傾向があり、賃金賞与が個人実績で決定される傾向がある。(5)企画・開発・技術・研究者の人事処遇制度が他の職種と異なる企業では、企画・開発・技術・研究者の賃金賞与が個人実績で決定される傾向がある。(6)仕事のモラールが高い社員は、苦情の解決度も高い傾向がある。(7)モラール低下の原因として、a.仕事の割には年収水準が低い、b.仕事の進め方の裁量度が低い、c.コミュニケーションの不足、などの回答が多い。また、社員調査に、企画担当者および研究者等に関する苦情事例別の相談先をみると、同僚・人望ある社員に相談する、が最も多く、事例2:残業手当への苦情、事例3:いじめへの苦情、と最多の相談先が同じであった。相談しない、が第1位になっているのは、企画・研究の事例と業績給制度の事例、であった。企画要員等の苦情は、リストラの事例のように、組合・従業員代表に相談する、が最多でない。すなわち、現時点では、企画要員等の苦情は、構造的な問題としては処理されてはおらず、一方で個別的調整システムが未整備である、ことを伺わせる。 4.国際的視点(オーストラリア・外国人労働者)からの研究/多様化している個別的労使関係について、国際的視点から、オーストラリアの状況およびわが国でも問題となっている外国人労働者について取り組んだ。オーストラリアについては、2007年に労働党が政権を奪取し、企業と個人の関係に変化が生じ、それまでの行き過ぎが修正されつつあるが、国際的コスト競争を無視はできず新たな取り組みがなされつつある。また、外国人労働者については、わが国の若年労働者の減少も相侯って今後重要な課題となっているためわが国における政策上および制度上の問題点の分析と今後の課題を明確にした。
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Research Products
(3 results)