2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランス高齢者福祉サービスの実施体制と供給過程--西部の一県の実態を踏まえて
Project/Area Number |
18530446
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
原田 康美 東日本国際大学, 福祉環境学部, 助教授 (00406000)
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Keywords | フランス / 社会保護システム / 高齢者介護保障 / 個別自立手当(APA) / 財源-供給の分離 / 地方分権化第2幕 / 県高齢者福祉計画 / CLIC |
Research Abstract |
本年度の「研究の目的」と「研究実施計画」に即して研究を行った結果、以下のような知見を得た。 1.フランスの高齢者介護保障施策は1962年の『ラロック報告』にさかのぼるが、1980年代半ばに至るまで、介護予防施策に一定の進展があったものの、身辺介護などの介護保障の施策は必ずしも十分に展開しなかった。1980年代末から1990年代になると中央レベルで高齢者介護保障政策が論じられ、その帰結として、1997年実施の「特別依存給付」(PSD)、それを大幅に改正した2002年実施の「個別自立手当」(APA)が成立した。この過程の分析により、フランスの制度的枠組の特徴として、(1)高齢者介護施策が雇用創出政策に従属して構想されること、(2)財源調達とサービス供給主体の多元的な組み合わせによる「財源一供給の分離」体制を通して、県中心にサービス提供の実施体制が構築されること、(3)職域分立型制度を中核としつつも一般化が成立している社会保障(所得、医療、居住の保障)と社会扶助から成る社会保護システムが前提となっていること、などの知見を得た。 2.高齢者福祉施策の実施体制を地方(県)レベルの実態を通して解明するために、現地(フランス西部のロワール・アトランティック県)に赴いて、高齢者福祉担当部局の福祉行政官に対するインタビューを行った。インタビューの内容およびそこで入手した文献資料を分析した結果、今日のフランスでは、(1)2003年、2004年頃から推進されている「地方分権化第2幕」を反映して県の役割が強化されていること、(2)県は高齢者福祉施策の策定、施策にかかわる諸アクターの連携調整を行う役割を担っていること、(3)県内の各「地区」に設置される「地域高齢者関連情報連携センター」(CLIC)(開設・運営は公私のアクターが担う)の連携調整機能と情報収集機能に依拠しつつ、県高齢者福祉計画を策定することが県に義務づけられていること、などの知見を得た。
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