2007 Fiscal Year Annual Research Report
フランス高齢者福祉サービスの実施体制と供給過程-西部の一県の実態を踏まえて
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18530446
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Research Institution | Higashi-Nihon International University |
Principal Investigator |
原田 康美 Higashi Nippon International University, 福祉環境学部, 准教授 (00406000)
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Keywords | フランス / 福祉国家 / 再編期 / 高齢者福祉政策 / 介護サービス / 市場化 / 地方福祉行政 / 高齢者福祉計画 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った現地調査で入手した分献・資料について解析と考察を進め、その上で、全体をまとめる作業を行った。具体的には、昨年の現地調査(フランスの西部に位置するロワール・アトランテイック県[県都:ナント市])で地方(県)の高齢者福祉行政担当者に対して行ったインタビュー内容とそこで入手した同県の[高齢者福祉計画](2006〜2010年)についての分析を行った。あわせて、在宅の高齢者に対する福祉情報提供システムの拠点として近年創設されている地域高齢者福祉情報センター(CLIC)の機能を明らかにすることにつとめた。 これらの作業を通して、フランスの地方行政における高齢者福祉の実施体制の一端が明らかになった。フランスの高齢者福祉は、県の議決、執行機関である「県評議会」がその大部分の権限を持っている。例えば、高齢者介護手当(APA)の管理運営、CLICの運営、高齢者、退職者の意思表明機関(CPDERPA)への財源提供などが挙げられる。 「県評議会」は、これらのに業務を通して、高齢者福祉サービスの供給体制の構築責任を果すのであるが、近年の高齢者介護経費と関連経費の増大は県民生費に深刻な影響を及ぼしている。一方、このことを背景に、中央の国が決定したガイドラインに誘導される形で、これまで限定的にしか展開していなかった民営化・市場化の度合が介護サービス供給の領域で増しつつある。「凍結された福祉国家」とされてきたフランス「福祉国家」も、「再編期」の今日、高齢者介護サービスの供給体制における民営化・市場化の流れを契機に、そのあり方に一定の「変容」を見せているのである。今後は、フランス「福祉国家」の「再編」による「変容」が社会福祉の他領域でも生じているのか、それはフランス「福祉国家」に質的変更をもたらすのか、という点を中心に研究を進めていきたい。
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