2006 Fiscal Year Annual Research Report
自尊心の普遍性について-脅威状況における適応機能の観点から-
Project/Area Number |
18530495
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
八木 保樹 立命館大学, 文学部, 教授 (20210221)
|
Keywords | ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック / 食事 / 感情 / 気分 / 資源 |
Research Abstract |
社会心理学では,脅威と自己制御を様々な概念と変数を使って扱った様々な理論は,表面上は異質に見えても,その脅威は自尊心への脅威として共通に概念化でき,従って個々の理論における自己制御の戦略には互換性があるという考えが出されている(Tesser, 2000)。さらにTesserは,共通の概念である自尊心の根幹にあるのは感情(affect)であるとしている。これを基に、ある二つの承諾誘導のテクニックが継時的に重なることが承諾に及ぼす影響を,資源としての自尊心あるいは感情による自己制御機能の観点からの検討を試みる。具体的には、食事とドア・イン・ザ・フェイス・テクニックが心理学実験への協力要請に対する承諾に及ぼす効果を検討するためのフィールド実験を行った。食事有でポジティブな感情状態にあるか食事無でニュートラルな感情状態にある被験者に「拒否させて譲歩する」手順の有無を掛け合わせた。つまり、半数の被験者は最初に出した大きな要請を拒否するように誘導された後小さな要請を受け、半数の被験者は最初から小さな要請だけを受けた。ポジティブな経験もしくはネガティブな経験だけの被験者は、感情維持もしくは回復の機能によって、ニュートラルな感情状態の統制群よりも承諾率が高かった。両方を経験した被験者の承諾率は統制群と変わらなかった。この後者の結果はポジティブな感情がネガティブな感情を処理するためのバッファを付与する一種の資源として機能することを示している。食事無・テクニック無条件と食事有・テクニック有条件において承諾した者は、自己の行動を正当化しようとした(不協和低減反応)。この結果は、文化差をこえて、自尊心あるいはその根幹にある感情が資源として機能することの例証となっている。 他に、女性の自尊心の基盤に関するデータをまとめた。
|