2008 Fiscal Year Annual Research Report
ハンセン病社会復帰者の生涯発達に関する生態学的分析
Project/Area Number |
18530524
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Research Institution | Sendai Shirayuri Women's College |
Principal Investigator |
沼山 博 Sendai Shirayuri Women's College, 人間学部, 准教授 (00285678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 武剋 東北大学, 教育学研究科, 教授 (90004085)
福島 朋子 いわき明星大学, 人文学部, 准教授 (10285687)
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Keywords | 教育系心理学 / 生涯発達心理学 / ハンセン病 / 生態学的分析 / 語り聞き / 社会復帰者 / 社会変動 / キャリア(経歴) |
Research Abstract |
本研究は、ハンセン病社会復帰者に対する面接調査等を通して、彼らの生涯を、施設入所した終戦直後から現在に至るまでの社会・文化的変動と関連づけて記述し、彼らの生涯に関する基礎的資料を作成することを目的とする。2009年度はそれまでと同様の面接調査を実施し、またこれまでの調査を踏まえて、社会復帰者のライフ・ヒストリーを作成して、社会・文化的変動との関連から考察した。主な結果は次の通りである。1)入所時の状況:現在70歳前後の元患者は、終戦直後から1950年代にかけて10代で施設入所した人々である。1948年よりプロミン治療が開始されたが、彼らは入所直後よりそれを受けた。しかし、わが国におけるプロミン治療は、特にその初期段階において、分量等使用方法が確立しておらず、そのため、副作用による障害や再発が生じた。その程度はその後の社会復帰の可能性を大きく左右するものであった。2)1960〜80年代:隔離政策に対する国際的な批判などを受け、事実上外出禁止が緩和され、社会復帰も認められるようになった。この時期、彼らは20代であり、またわが国は高度経済成長期でもあった。障害の軽い人々は、資金を得るために外へ働きに出たり、施設内で自動車免許を取得したりし、社会復帰の準備を進めた。そして、建設業や運搬業を中心とした定職を得て、そして同じ入所者と結婚して、退所にこぎつけた。しかし、病歴を隠すため、同じ職場にとどまることは難しく、転々とするのが一般的であった。同じ理由で、他の退所者や在郷家族と連絡を取ることも少なかったようである。3)1990〜2000年代:1996年のらい予防法廃止、2002年の国賠訴訟判決をはじめ、この時期にハンセン病をめぐる大きな動きがあったが、退所者相互や在郷家族との関係にそれほど大きな変化はみられない。しかし、高齢化を受けて、退所者の自助グループを作ったり、介護問題で在郷家族と関係を復活している人も出てきている。
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