Research Abstract |
目的 児童・生徒の理解支援ニーズに応えるために教師は教材を自作するが,実現は容易でない。これに対して,昨年度の研究では,どのような標識化の様式が理解支援ニーズに応えるかを検討し,結果の一部を発表した。今年度は調査1として,小学生のデータを追加し検討した。次に,調査2として,文字サイズが理解支援を実現したか検討した。 調査1 実験参加者:小学生90人,大学生90人,高齢者90人。実験材料と手続き:教材で3つの上位手順を見出しとして挿入する際,付与される文字サイズ,アンダーライン,インデントの有無を操作し,(1)見出し無し条件,(2)見出しのみ条件,(3)見出し+文字サイズ条件,(4)見出し+アンダーライン条件,(5)見出し+インデント条件を設定した。「わかりやすさ」と「かけやすさ」について7段階評定を求めた。結果と考察:総じて,年齢や評価指標に関わらず,教材化において,より大きな文字サイズで上位構造を明示すれば,幅広い年齢の学習者の理解支援ニーズに応え得るが,見出しを挿入するだけでは小学生と高齢者の理解支援ニーズに応え得ないことが示された。 調査2 実験参加者:携帯電話の利用経験のある小学校6年生60人;大学生60人,前期高齢者60人。実験材料と手続き:調査1の教材で見出しの挿入様式を操作した。結果として,(1)見出し無,(2)見出しサイズ小,(3)見出しサイズ大,(4)見出しサイズ大+立体化,(5)見出しサイズ大+余白化,(6)見出しサイズ大+立体+余白を設定し,文章と119番電話のかけ方の「分かりやすさ」について7段階評定させた。併せて,理解支援ニーズを尋ねた。結果と考察:総じて,見出し文字が大きな場合,それに付随する余白行の分節性が上位構造性を明示し,これが読解方略の支援を介して理解支援の実現に利用可能であることが幅広い年齢で推察される。 #今年度の結果は,2008年の日本心理学会,同年日本教育心理学会,同シンポジウムでで発表される。また,これに先立ち,2007年の日本心理学会ならびに2008年日本教育心理学会シンポジウムで本研究の一部が発表された。
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