Research Abstract |
H19年度は,対人不安者の自己注目とパフォーマンスの関係について,会話場面を用いた検討を行った。 対人不安者は,対人状況におかれると,自己のネガティブな考えや生理的変化に注意を向ける自己注目が生じやすく,うまく会話が行えないというパフォーマンス低下を示す。この両者の関係は,処理リソースの観点から説明することができる。自分に関係する内的情報に注意が向けられること(自己注目)で,処理リソースを内的情報が占有するため,外的情報の処理に必要なリソースが減少することになり,結果的にパフォーマンスの低下を引き起こすと考えられる。この点を検討するためには,注意を内的・外的情報に向けるという操作を行うことで,処理リソースを必要とする課題の成績に影響が出るかを調べればよい。そこで本研究では,「ゴミ問題」というテーマのもと,初対面の人と会話をしてもらうという状況を設定し,注意を内的情報・外的情報に向けさせる教示と操作を行い,注意の方向やストレス反応,会話量に及ぼす影響を検討した。その結果,対人不安定群は,注意操作に従って内的・外的情報に注意を向けることができること,外的情報に注意を向けることで自発的会話数が増えることがわかった。それに対して対人不安高群は,注意操作に関係なく,内的情報と外的情報に向けられる注意の主観的評価に違いは認められなかった。しかも,自発的な会話数にも違いは認められなかった。このように,対人不安高群は,外的情報に注意を向けるよう促しても自己注目をしやすく,それが処理リソースを占有し,パフォーマンスの低下と結びついていると考えられる。
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