Research Abstract |
H21年度は,本研究課題の集大成として,慢性疼痛患者に対する6週間からなる集団認知行動療法プログラムを作成し,その効果を検討する介入研究を行った。12名の外来慢性疼痛患者に対してその効果を検討し,ベースライン,プリテスト,ポストテスト,および6ヶ月フォローアップにおける指標の測定を行った。指標は,マインドフルネスの程度を測定するFFMQ,慢性疼痛の心理的側面を測定するPCS,認知的制御能力を測定する認知的統制尺度を用いた。その他,主観的苦痛度(11件法),通院回数,投薬,ブロック治療回数などが指標として検討されている。これまでのところ,予備的分析の最中であるが,主観的側面よりも,通院回数や治療の質に影響が出ている様子である。分析が終了次第公表の予定である。 さらに,マインドフルネスによる認知的機能の改善を測定する新しい指標の開発を行った。従来,マインドフルネストレーニングによるメタ認知的気づきの変容は,質問紙で測定しづらいことから,自伝的記憶課題を応用した,MACAMという実験課題による測定法が開発されいたが,評定方法が難しく,熟練を要することが指摘されていた(勝倉ら,2009)。そこで,マインドフルネストレーニングにより変化する気づきの側面を,より簡便に気づきの側面を測定するための新たな方法を考案し,その妥当性の検討を行った。この方法は,それまで拘っていた側面が,どの程度気にならなくなったかをインタビュー法により抽出し,評定する方法である。40名の抑うっ傾向が高く,その経験を繰り返す傾向のある大学生を対象に調査を行い,信頼性,妥当性の検討を行った。その結果,自身の苦痛から距離を置いた視点の獲得を評定しうることが確認され,この評定は,臨床経験のない大学生によっても可能であることが示された。今後,こうした新たな指標を用いて,より多面的に上記のプログラムの効果を検討していきたい。
|