2006 Fiscal Year Annual Research Report
長期入院の統合失調症患者における改善・増悪指標の臨床心理学的検討
Project/Area Number |
18530546
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横田 正夫 日本大学, 文理学部, 教授 (20240195)
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Keywords | 長期入院 / 統合失調症 / 改善指標 / 増悪指標 / 臨床心理学的検討 |
Research Abstract |
平成18年度では、平成11年よりのデータを入力し、データベースとして参照可能とした。特に描画テストの画像データを入力し、継時的変化を一瞥できるようになった。そうして継時的変化をみてみると、症例の中には、描画の質的変化が起こることがあり、中には課題で要求している以外のものが描きこまれることが見出された。ある慢性統合失調症患者では、23年間に26枚の描画が描かれた。この症例では本科研費の研究を始める以前から描画データが蓄積されていた。この症例の診療録と看護記録を参照しながら、描画特徴を検討した。この症例はもともと退院を強く希望していたが、母親がそれに同意せず、60歳になったら退院させると本人に約束していた。しかし現実には61歳を過ぎても入院を継続していた。そのころ描画のなかに「家」が描きこまれるようになった。この家の出現は、母親が退院を約束した年齢を越した時点で描かれたのであり、この時入院後ほぼ15年を経過していた。本人は入院当初の記憶を鮮明に記憶し、その影響が描画課題に現れてきたと想定された。また本事例では身体的手術の必要が生じた際に、描画において空間の歪みが生じた。身体的状態が描画に影響しているのである。このように課題における描画の質的変化には、事例の生活史的なテーマが影響し、身体的な状態の影響も見られた。描画にはこうした変化ばかりでなく、人物の歪みとして示される場合があり、人物が用紙からはみ出てしまう場合もある。そうした変化のときに、どのような生活史的な出来事が起こっているかを検討することで、事例ごとに、経過を、心理テストによって検討することができる。また同時に記憶検査、GHQのデータを集めているので、知的な変化との対応、ならびに心身の状態の自覚との対応も検討することができる。こうした検討は、統合失調症の長期経過の臨床心理学的検討として意義深い。
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