2007 Fiscal Year Annual Research Report
長期入院の総合失調症患者における改善・憎悪指標の臨床心理学的検討
Project/Area Number |
18530546
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横田 正夫 Nihon University, 文理学部, 教授 (20240195)
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Keywords | 統合失調症 / 描画特徴 / 改善指標 / 憎悪指標 / 静穏化 |
Research Abstract |
平成11年からの描画のデータを入力し、データベースとして参照可能とし、描画データの継時的変化を追うことを可能とした。これらデータベースと、カルテ、看護記録とを参照し、統合失調症の長期経過において、一度は描画の統合が得られるが、中年期に至り断片化し、その後に再度統合が可能になることを示した。こうした傾向は複数の症例において共通してみられる特徴であった。身体症状や認知的機能の悪化が認められる症例において、同時期の描画に、一時的に整合性が改善する場合があり、しかし長くは続かず、急速に描画が拙劣となり、最終的には描けなくなった。このことは、身体的症状、認知的機能の低下を、補償するようなモーメントが働いていることを暗示している。別の患者では、階段から落下し足を怪我した後の描画では、描かれた人物の足は用紙をはみ出していたのであり、身体的状態が描画に反映していると考えられた。 また、これまでに描画をおこなった患者の数は371名で、繰り返し実施可能であったものでは、5年目において描画者数が増加する。すなわち、最初の描画から5年を経過して、一度退院できた者も再入院し、その際に描画テストがおこなわれた、と考えられた。そして最初の描画から10年後まで経過が追えて、再検査が可能であった者は34名であった。これらの患者の描画を比較すると、描画の特徴の活動性、写実性は10年後に低下しているが、整合性は逆に増加している。非統合失調症患者では、10年後の描画において活動性、写実性、整合性のいずれも低下していた。こうした結果から、患者では5年経過で、増悪し、10年経過で静穏化し、その経過が描画人数の増加、ならびに整合性の増加に反映していたと考えられた。
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