Research Abstract |
様々な方位に傾いた運動縞を組み合わせることにより,渦巻き残効と同様の運動残効を生じさせ,そのような運動パタンによって生じる奥行き運動残効と回転運動残効を調べた.特に,奥行き運動残効に関しては,運動に伴って格子のコントラストが増加する場合と減少する場合とで,残効量に違いが生じるかどうかを調べた.視野の上下左右に4つの運動格子を呈示し,運動格子の運動方向を4つの運動格子が内向きに運動する条件から外向きに運動する条件の5条件を用意し,それらに順応した後の運動残効を測定した.結果,奥行き運動残効については,順応刺激の運動方向が外向きのもののうち,15°,45°は内向きの残効が生じたが,順応刺激の運動方向が75°のときには,外向きであるにもかかわらず拡大残効が生じた.しかし,コントラストの増減の効果は見られなかった.また,奥行き運動残効が生じにくくなる条件では回転運動残効が強くなり,逆に,回転運動残効が生じにくくなる条件では奥行き運動残効が強くなる傾向が観察された.また,上下左右と斜め方向の8つの運動格子を順応刺激とする実験も行った.上下左右の4つと斜め方向の4つの運動縞の空間周波数を2条件,上下左右の4つの運動縞の運動方向2条件,斜め方向の運動縞の運動方向を2条件とした.結果,拡大残効の方が縮小残効よりも大きな効果があった.また,上下左右と斜め方向の運動縞の運動方向が一致したときに,より大きな残効が得られた.しかし,空間周波数の効果は見られなかった.最後に,運動縞ではなく,放射運動をするドットの識別閾を測定した.被験者は,車椅子に乗り,放射運動に調和して車椅子を前後させる条件と,逆方向に前後させる条件の二通りで閾値の測定を行った.結果,放射運動検出閾は一致条件よりも不一致条件において有意に低いことがわかった.
|