2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530576
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鈴木 直人 Doshisha University, 心理学部, 教授 (30094428)
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Keywords | ポジティブ感情 / 思考の柔軟性 / 拡張-構築理論 / 集中課題 / 拡散課題 |
Research Abstract |
本年度は,ポジティブ感情の拡張-構築理論(The broaden-and-build theory)の仮説に基づいて,拡散課題および集中課題を用いて,ポジティブ感情が課題遂行に及ぼす影響について2つの実験を行い検討した。実験1では,集中課題遂行に対する感情の影響を検討した。その結果、ネガティブ感情喚起群は思考を狭める「収縮効果」を示し、課題成績の向上を示したが,ポジティブ感情喚起群は,課題成績に影響を及ぼさなかった。実験2では、拡散課題遂行に対する感情喚起の影響を扱った。その結果、ポジティブ感情喚起群では拡散課題の成績が向上し,ポジティブ感情が思考を広げる「拡張効果」が示された。さらに,実験3では,ポジティブ感情の強さの違いが拡散課題成績に及ぼす影響について検討した結果,ポジティブ感情は拡散課題遂行に影響を及ぼすが、その強さの程度の違いは,課題成績に影響を与えずなかった。 以上の結果は,ポジティブ感情は多様な問題解決方策を必要とする拡散性思考課題ではその成績を向上させ,一方、ネガティブ感情は弁別課題のような収縮性思考を要する課題に優位である可能性が示唆するものである。以上のように,本研究は、ポジティブ感情の持つ拡張効果、またネガティブ感情の持つ収縮効果を実証的に示したものである。従来のポジティブ感情に関する拡張-構築理論は、理論が先行し、実証的データが少ないところに重大な欠点を持っていた。本研究は,この分野に実証的なデータを提供し他という意味においてポジティブ感情研究、あるいはポジティブ心理学に貢献するものである。この成果は、欧文誌に投稿すべく準備中である。
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Research Products
(30 results)