2006 Fiscal Year Annual Research Report
文書館資料を用いたソビエト教育形成史(1931-1936)の実証研究
Project/Area Number |
18530582
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
所 伸一 北海道大学, 大学院教育学研究科, 教授 (50133682)
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Keywords | ロシア / ソビエト / 教育史 / 文書館 / 教育課程 / ポリテフニズム |
Research Abstract |
本研究の目的は、教育人民委員部系の文書館所蔵の未公刊文書を中心とした資料開拓を行うことにより、1930年代ロシアにおける「体系的」な教育課程・評価制度の初期構築過程を解明し、これによりソビエト的・スターリン的な学校制度・教育学の形成史を実証的にとらえて、これを後発国近代化の模索経験として再評価することである。 計画第一年度は教育人民委員部下の諸研究所の資料を保管するロシア教育アカデミー学術文書館において2006年11月上旬、調査を行ったが、当初予定の「教育方法・カリキュラム研究所」関係に加えて、「中等学校研究所」ファイルを探索した。 これらの結果、後者の研究所が(当初は「ポリテフニズム労働研究所」)、従来歴史で説明されていた1931年夏ではなくて同年1月初めに設置されたこと、且つ、有力な労働教育・ポリテフニズム理論家たちを同年春から研究員として急速に動員していたこと、また規模は1933年頃には研究員約120名、補助職員とあわせて190名に達していたことを明らかに出来た。この研究所は一般学校における「労働」科目の廃止とともに1937年に廃止された(これは既知のこと)のであったから、本研究代表者は、以上より、スターリン・ソビエト体制は、定説化されていた1931年9月の党決定で「系統的」教育課程化とポリテフニズム強化とを打ち出すよりも実はもっと早くに、この2つの方向の模索を決断し、これに実際に人員と予算を付けたと主張しうること、したがって1937年の「廃止」はポリテフニズム的な課程・教授法の開発の「不首尾」との政治判断により「模索」を打ち切ったものであり、迷いなき近代学校化への切り替えであったと歴史説明を深めることができた。 これらの成果の一部は、北海道教育学会第51回研究発表大会(於・名寄市立大学、2007年3月)において「ソビエト教育形成史における1930年代のポリテフニズム「強化」-文書館資料の若干の発見から-」と題した発表の中で公表した。
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