2008 Fiscal Year Annual Research Report
文書館資料を用いたソビエト教育形成史(1931-1936)の実証研究
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18530582
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
所 伸一 Hokkaido University, 大学院・教育学研究院, 教授 (50133682)
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Keywords | ロシア / ソビエト / 教育史 / 文書館 / 教育課程 / ポリテフニズム / 教育評価 |
Research Abstract |
目的と経過 : 本研究は、文書館所蔵の未公刊文書を中心とした資料開拓により、1931年の「小中学校に関する」党決定発表以後のロシアにおける「体系的」な教育課程・評価制度の初期構築過程を解明し、これによりソビエト的な学校制度の形成史をえがくことを目的とした。計画期間に3度の調査を実施し、国立公文書館(GARF)および教育アカデミー付属学術文書館、並びに公共歴史図書館およびウシンスキー教育学図書館において教育課程資料、教師向け指導資料を得ることができた。 対象の限定と成果 : 計画の実際では、文書館で収集し得た資料の範囲および本代表者の従来の主題の継承の点から、「労働」科目や理科・数学を含む課程の編成作業と、学年別・課程別の評価制度の導入過程を分析した。この結果、「労働」の編成・体系化に関わるポリテフニズム労働研究所は、従来歴史で説明されていた1931年の夏ではなくて同年1月に設置され、有力理論家たちが同年春から研究員として動員されていたこと、その規模は最大時1933年頃には総計190名に達していたことを突き止めた。以上より、ソビエト体制は、定説の1931年9月の党決定で「系統化」とポリテフニズム化とを平行して打ち出すよりも実はもっと早くにこの2つの方向を決断し、これに資源を投入したことが判明した。評価の面では、1932年8月の党決定で指示して後、まず高等教育に、遅れて、中等・初等教育にも1933年春から記帳・評価制、進級試験を導入したこと、この中で、「労働」では現場の授業の組織力の遅れにより1934年から適用する提案を行うに止まったことを跡づけた。 これらの成果はそれぞれ、北海道教育学会大会(平成19年3月、名寄市)および教育史学会大会(平成19年9月、善通寺市)において口頭発表された。
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