2008 Fiscal Year Annual Research Report
身体運動が課題となる授業における子どもの相互主観的自我形成に関する現象学的研究
Project/Area Number |
18530587
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
田端 健人 Miyagi University of Education, 教育学部, 准教授 (50344742)
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Keywords | 教育実践 / 学級 / 自己 / 現象学 / 気分 / グループ・ダイナミクス / 軽度発達障害 / 身体運動 |
Research Abstract |
当該年度の研究成果は、次の2点に要約できる。1. 学級集団における子どもの共同性と自己性の変容・成長に関する理論的研究。2. 当該研究課題に関する参与的観察をもとにした事例研究。 成果(1) : 学級集団とその成員との相互影響関係を、社会心理学的なグループ・ダイナミクス理論により考察した後、このアプローチの不十分さを、ハイデガー現象学によって克服した。この研究により、学級集団における子どもの共同性と自己存在の変容・成長を解明する新たな観点や概念が提示された。また、異質な他者を排除・攻撃する集団の凝集性とそうでない凝集性との違いが明確になった。さらに、集団と個人の存在を規定しているのが気分であるという新たな知見が得られ、より深い気分において、本来的な自己と共同性が同時に発現することが、理論的に明らかとなった。これは、ハイデガーの共同体論に対する従来の批判を、再批判するという意義も併せもっている。 成果(2) : 継続的に参与観察した或る学級の記録を用い、この学級での子どもたちの共同性と自己存在の成長を、上記(1)の成果を踏まえつつ記述的に解明した。この点での成長を促す教師の働きかけは、当初予期した通り、主として身体運動を課題とした授業であった。この研究によって、子どもの自己と共同性の成長を、従来の研究とは異なり、カウセリング場面や実験場面ではなく、子どもにとって最も日常的な学級場面において追跡し考察する、という交付申請時の目的を達成した。また、こうした成長が最も典型的に観察されたのが、軽度発達障害の疑いがある子どもであったため、特別支援の領域においても注目に値する事例を提供でき、「心の理論」や「行動療法」とは異なる実践的かつ理論的な知見が得られた、と考えられる。
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