2007 Fiscal Year Annual Research Report
学習意欲向上のための「質量評価モデル」の適用と検証-「確かな学力」の実現-
Project/Area Number |
18530593
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平山 満義 University of Tsukuba, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20110637)
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Keywords | 学習意欲 / エスノグラフィー法 / 確かな学力 / 質的研究 |
Research Abstract |
本研究の目的:本研究は学習意欲向上のための「質量評価モデル」を開発し、それに沿った調査用紙により、学習意欲の向上に関する複数の異なるデータを収集し、学習効果の有意差を検定することを目的とした。 本研究の方法:まず、「確かな学力」を定義し、それが学習意欲、思考・論理力・基礎基本の3要因から実現されることを明示した、まず学習意欲を定義、10個の構成項目から成ることを明示した。同じく思考・論理力、基礎・基本のそれぞれ10項目からなることを明示した。それぞれの項目を調査用紙として作成し、予備調査により、3要因のそれぞれを構成する10項目の修整を行った。こうして出来上がったのが、教師用、生徒個人用、生徒友人用の3種類の調査用紙である。これを、小4の2クラスにお願いし、試験的にこの調査を実施し、最終チェックを行い、本テスト用の調査用紙を関した。本テストではこれらを使って、本人用、友人用、教師用の3種の調査用紙により、自己自身、友人、教師の3者からそれぞれ意欲の評価を本調査として行った。この調査結果は分散分析に付され、3者間に差があるかどうかの有意差検定を行った。これに加えて、被調査者の学習意欲を普段目にする日常行動や言動から、評価対象者の意欲をエスノグラフィー法により解釈し記述した。こうした手続きにより、意欲判定の客観性と厳正さを実現した。 研究の結果:学習意欲の自己評価は全体的に甘く、他者評価は厳しいことがわかった。教師評価はおしなべて児童よりも甘く、指導という立場が評価結果に反映しているように推察された。また、記述的・解釈的評価では、どの種の調査対象であれ、対象者の普段の学級生活状况を踏まえた評価を行っており、児童一人ひとりの本性がスケッチ・スタイルで記述され、調査用紙以上に有力な判定資料になることが明確になった。 得られた知見;学習意欲調査は、客観的といわれるアンケート調査では、子ども一人ひとりの実態あるいは本性を捉えることは難しい。むしろ、学校内を含め日常生活の事情も反映しやすい解釈記述主体のエスのグラフィー法の方が、手間取るが、意欲の実態を直接的に現していることが確認できた。したがって、手続きは厄介だが、今後の意欲評価の研究あるいは実践においては、このエスノグラフィー法など、質的評価法を積極的に導入すべきであろう。
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