2007 Fiscal Year Annual Research Report
ソ連崩壊後のロシア社会における少子化の進展と子育ての実態に関する調査・研究
Project/Area Number |
18530617
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
村知 稔三 Aoyama Gakuin Women's Junior College, 子ども学科, 教授 (00190926)
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Keywords | 保育 / 人口 / 家族 / 親子関係 / ロシア |
Research Abstract |
2か年計画の最終年度にあたる2007年度は、本研究課題の中核となる「ロシア社会における少子化の進展と子育ての実態に関する調査」の実施と、そこで得られた結果の整理や分析にとりくんだ。 具体的には、前年度末に行なった調査の設計と打ち合わせのあと、2007年夏にかけて現地の協力者、すなわちモスクワ、サンクトペテルブルク両市の国立教育大学や国家統計委員会の研究者らと電子メールなどによる意見交換を重ねたうえで、8月末から9月前半にかけて両市を再訪問し、上記調査を実施した。 そこで明らかになった主な結論はつぎのとおりである。(1)1991年のソ連崩壊(解体)の影響を受けて、ロシアでは1990年代に少子化が急速に進み、崩壊前に49‰(千分の一の単位「パーミル」)であった普通出生率(出生数÷人口)が1990年代末に31‰まで低下した。ところが、21世紀に入ると、それが回復し始め、近年は30‰台後半に達している。(2)他方、死亡率はソ連崩壊後に上昇し、現在も高止りの状態にある。その結果、崩壊後から人口は自然減少に転じており、1990年代末以降の自然減少率は6‰を超える高い水準にある。(3)ソ連崩壊前に7割を超えていた保育施設への就園率(園児数÷乳幼児総数)は現在5割ほどに低下しており、とくに農村の値は35%まで急落している。「子育ての共同化からの後退」というべき現象がみられる。(4)その要因として、保育施設網の縮小、保育施設への親の信頼の低下、若い世代で強まる「専業主婦志向」、夫婦の完結出生数(子ども数)の減少傾向などがあげられる。(5)2000年以降のロシア経済の好転を反映して保育予算は増額され、保育施設網の縮小にも歯止めがかかってきている。夫婦や家族の子ども像も変化しており、ロシアの子育ての様態は急激な変動の過程にあるので、ここしばらく注視が求められる。 なお、本研究の成果をまとめた報告書(日本語版・英語版)は現在、印刷・製本中である。
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Research Products
(1 results)