2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18530620
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 健一郎 Hokkaido University, 大学院・教育学研究院, 准教授 (80291582)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶村 光郎 琉球大学, 教育学部, 教授 (70255016)
藤澤 健一 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (00301812)
|
Keywords | 近代沖縄 / 教育実践史 / 教育会雑誌 / 標準語教育史 / 教員団体史 / 発音矯正 / 宮良長包 / 沖縄県教育会 |
Research Abstract |
1、本年度も昨年度に引き続き、基礎史料としての『沖縄教育』の収集及び整理を行った。第一に、右垣市個人宅及び沖縄国際大学南島文化研究所にて、未発見の6冊の『沖縄教育』を新規に収集した。第二に、上記6冊も含めて総目次の作成を進めるとともに(近藤)、項目別目次の項目設定を検討した。総目次及び項目別目次・解説は来年度作成する報告書に掲載する。 2、「近代沖縄における発音矯正の教育史-宮良長包作詞作曲『発音唱歌』(1919年)を中心に-」と題する口頭報告を行った(近藤)。沖縄における標準語教育政策及び実践においては、遅くとも日進戦争以後には「正しい発音」にも注意が向けられていた。宮良長包の実践の背後にある沖縄教育界の動向をふまえて、「発音唱歌」の歴史的位置の解明を課題とし、以下のことが明らかにできた。 日清戦争後に「訛」を正すことを意識する教員が現れ、1909年には伊波普猷が音声学講演により発音矯正のための学的知見を教員に提供するに至った。決定的なことは1911年に沖縄の学事視察を行った小泉又一文部省視学官による発音矯正の指示である。小泉の講演を聴いた小学校長たちが発音矯正を教育課題として討議したにとどまらず、沖縄県知事も政策課題の一つとして指示を繰り返した。そして継続的に師範学校附属小学校では、発音矯正を課題として位置づけ研究しており、宮良は1915年以来その一員であった。宮良は、このような教育、政治状況を与件とし、唱歌を専門とする教員として発音矯正において自らできることを模索したのであり、『沖縄教育』に発表した諸論考や仲西小学校長に赴任して作詞作曲した「発音唱歌」は模索の産物であった。歌を楽しく歌うことと発音矯正とを結び付けて実践を行いえた点に、宮良の独創性があった。
|