2007 Fiscal Year Annual Research Report
米国の市長主導の教育改革と市長部局による教育行政の包摂に関する調査実証研究
Project/Area Number |
18530637
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
小松 茂久 Kobe Gakuin University, 人文学部, 教授 (50205506)
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Keywords | アメリカ教育統治 / 市長と教育 / アメリカ都市教育 / アメリカ教育政策 / アメリカ教育行政 / アメリカ教育委員会改革 |
Research Abstract |
アメリカでは近年において教育統治改革か進行し、従来の連邦一州一地方の三層構造による教育統治システムとは異なるシステムが形成されつつある。2001年のNCLB法の制定によって連邦一州一地方の政府間関係が変質しつつあることと、地方教育委員会の機能不全に関わる批判とあいまって、一部の州や大都市に限ってではあるが、州教育当局が積極的に地方学区や州内の学校を管理すること、および、市長による教育統治の包摂が進行しつつある。 本研究では、シカゴ、ボストン、ニューヨークなどで実施されている市長による教育統治の包摂を事例として考察することで、この改革が従来の教育委員会が幅広い裁量権を有して学校管理を行う地方分権的なアメリカの教育統治システムの抜本的な再編をもたらす可能性について検討した。特に、大都市教育委員会の何が問題でこうした改革が進行しているのかに焦点を当てて検討を加えた。その結果、教育財政の非効率性、低学力、高い中退率、校内暴力の多発といった学校教育の抱える問題に教育委員会が適切な対応存してこなかったこと、これらの教育問題の背景に多数の無資格教員、教職員の引くモラール、厳しい学校の職場環境、児童生徒の家庭の経済的貧困などが横たわっていた。そして、個別学校や教育委員会の努力だけにこれらの問題解決を委ねるのではなく、都市が一体となって子どもの生活環境、学習環境の改善に取り組む必要性が認識されてきた。教育委員会の統治能力に疑問が呈されるとと同時に、都市政府の最高責任者である市長に教育改善の期待が集まり、市長は教育を含めた都市全体の生活の質の改善にとってふさわしい地位にいることを市長自身が再発見するとともに、郡市の主要なビジネスやメディアも、都市の再生を目的として、市長主導の教育改革を支援している。1990年代半ば以降の市長による教育統治の包摂の効果について各種の調査分析が実施されてきているが、成果について結論を下すには時期尚早である。
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Research Products
(3 results)