2007 Fiscal Year Annual Research Report
中学校社会科歴史教科書に現れたアイヌ民族関係記述について
Project/Area Number |
18530671
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
吉田 正生 Hokkaido University of Education, 教育学部, 教授 (20261373)
|
Keywords | アイヌ / 社会科 / 教科書 / 近世史 / 多文化教育 / 社会構成主義 |
Research Abstract |
本研究によって,実証的な成果と規範的な成果を得ることが出来た. 実証的な研究部分では,次の五つの問いを追究した. (1) 過去から現在までの中学校社会科歴史(近世史)にみられるアイヌ民族関係記述はどのようなものか. (2) 中学校社会科歴史(近世史)にみられるアイヌ民族関係記述は何年度版から登場したのか. (3) 登場の背景には何があったのか. (4) 各教科書会社の記述は,どのような推移を遂げたのか. (5) その推移の背景には何があったのか. その結果,明らかとなったのは:昭和53年本からアイヌ民族関係記述が登場したこと;それは北海道の民間教育団体の教師たちの教育実践の成果を取り入れたものであったこと;北海道市場に大きな足場を持つ教育出版社と東京書籍,そしてその民間教育団体の教育実践を大きく反映した編集内容に転換した学校図書が,民衆史的な取り扱いをしていること;しかし,当時は編集者や執筆者が民衆史的内容・人権教育的内容を拡充していた時期であり,アイヌ民族関係記述の採用もそうした流れの中で生じたものであったことなどである. 規範的な研究部分では,歴史構成主義に基づいた授業モデル・プランを具体的に作成することが出来た.教育内容は近世史におけるアイヌ民族の歴史であり,教材は実証的研究で分析対象とした. 授業モデルは次のとおりである. 事象提示→ヘゲモニックな歴史学の成果の習得→「物語」の発見→語り手の社会的状況の把握→対話(自己の立場の明確化→ある主張のメタ認識1→ある主張のメタ認識2→ある主張のメタ認識3)→「物語」の創作 このモデルに基づいて実際に授業プランを作成した.
|