2007 Fiscal Year Annual Research Report
1940年代後半〜60年前後の音楽科カリキュラムの形成・展開に関する研究
Project/Area Number |
18530707
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
菅 道子 Wakayama University, 教育学部, 准教授 (70314549)
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Keywords | 音楽科 / コア・カリキュラム / 戦後教育改革 / 小学校 / 学習指導要領・ |
Research Abstract |
【19年度】…平成18年度からの作業を継続・発展 平成19年度には、当該時期のカリキュラム編成と教育実践の実際について、個別事例によって検討を行った。 (1)音楽科の教材構成原理の特質を明らかにするために、とりわけ1960年代に注目された、作曲家松本民之助が提唱した音楽統合学習の原理に基づいた教科書(音楽教育図書)の収集・分析、並びに現場の教師達による音楽統合学習連盟の活動を機関誌『楽』の分析、関係者への聴き取りを通して検討を行った。 音楽統合学習の原理は、1967年版学習指導要領の「基礎」領域の設定に影響を与えていた。また音楽の構成要素・構造を理解し、それらの統合によって音楽学習を組織していく考え方は、分析的になり過ぎるとの批判もあったものの、楽曲内容の理解を深めるという点ではその後の音楽科の教材構成の構築に多大な影響を与えていた。また感覚学習を取り入れた音楽統合学習は、音楽要素の視覚化、身体表現化などを促進し、音楽要素の理解と児童の経験学習との統合をも視野にいれた学習原理を提示するものとなった。 (2)1950年前後の時期の器楽教育の実態を明らかにするために京都市の器楽教育政策とその実践について錦林小学校の事例を中心として検討を行った。京都市の楽器予算の整備、教科書の編纂、指導員の配置など諸政策は、先駆的であり、戦後まもない学校教育の器楽教育の実現をもたらす重要な要因となっていた。また政策レベルでの芸術教育としての音楽科の理念と行政者や実践家たちが情操教育、態度形成の有効策として捉えていた理念とに間にはズレがあったことが明らかであった。
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