Research Abstract |
自己開示の中の障害開示は,障害という否定的な内容が含まれるため,対人魅力を減少させる可能性がある。しかしながら,実際には,障害開示は視覚障害者理解にとって一定の効果があることが報告されている。そこで,前年度は,弱視者による障害開示研究を行ったが,十分な成果が得られたとは言えなかった。このため今年度も引き続き障害開示に焦点を当て,全盲学生による障害開示の内容が対人魅力にどのような影響を及ぼすのかを解明することを研究目的とした。調査手続きとしては,3種類の障害条件(ポジティブ,ニュートラル,ネガティブ)における開示文を作成し,講義時間の一部を利用してそれらを健常学生270名に提示した後に,開示認知項目,印象形成尺度,情緒的魅力尺度,相互作用志向性尺度を用いて評価を求めた。その結果によると,ポジティブ条件では,女子の方が男子よりも望ましさ・真正性の認知評価が有意に高く,開示者に対し友好的な印象を示していた。また,障害学を専攻していない学生は,ポジティブな開示内容であっても否定的な印象を抱いており,同様の傾向は障害者との接触経験のない人にも見られた。一方,ニュートラル条件では,男子の方が女子よりも迷惑さの認知評価が有意に高く,女子の方が男子よりも開示者に対し打ち解けやすいことが示された。専門領域の要因では,対人魅力への影響は見られなかった。接触経験の要因では,接触経験のない入の方がある人よりも内面性の認知評価が有意に高かった。ネガティブ条件についてみると,特徴的傾向は見られなかった。最後に,開示条件の比較では3尺度のほとんどで,ポジティブ条件〉ニュートラル条件〉ネガティブ条件の順に尺度得点が有意に高かった。この関係は,ほぼすべての個人的特徴に見られており,障害開示を行う場合には,望ましい内容の開示をする方が対人魅力を増大させることにつながることが明らかとなった。
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