Research Abstract |
局所環上の代数サイクルの理論で最も重要な概念は,環のトッド類と呼ばれるものである。トッド類は,環のホモロジー代数的性質を深く反映する興味深い対象である。Robertsは,トッド類がある性質を満たす環に対して交点数の消滅定理を証明し,Serre予想を部分的に解決した。その性質を満たす環をRoberts環ということにして,Roberts環を完備化するとRoberts環になるかどうかが,最初の未解決問題であった。この問題は,完備化から誘導される有理係数の有限加群のGrothendieck群の射が単射であることと同値である。これは,射影多様体のアフィン・コーンの原点での局所環や,孤立特異点のときなどは正しいことがわかっていた(Kamoi-Kurano)。また,HochsterやDaoによって,有理係数でない場合では,単射性が成立しない例が発見された。本年度は,インドのTata institute of Fundamental researchのV. Srinivas教授との共同研究によって,幾何学的な手法によって,完備化から誘導される有理係数の有限加群のGrothendieck群の射が単射にならないような例の構成に成功した。この環は,正規環ではないが,複素数体上本質的に有限型の環である。この環を使うことによって,完備化がRoberts環であるが,もともとはRoberts環ではない例を構成することができた。この結果は,ある査読付きの雑誌に掲載されることが決まっている。 また,Cox環の有限生成性に関して,コンピュータ実験を行っているが,それがほぼ完了して,正標数での有限性を証明することができた。この結果も,松岡直乏氏との共著論文として発表された。現在,ある査読付きの雑記に投して,レビューを受けている。
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