Research Abstract |
コンパクト単連結単純Lie群Gをその極大トーラスTで割って得られる旗多様体の整形数コホモロジー環は,G=E_8の場合のみ未決定であったが,懸案であった30次の生成元の特定に成功し,これによりE_8/Tの整形数コホモロジー環を完全に決定することができた.これに関しては,計算の中核部分をなす等質空間E_8/T^1 E_7の整係数コホモロジー環の結果を論文にまとめ,Acta Mathematica Sinicaに投稿中である.これをもとにしたE_8/Tの整係数コホモロジー環の結果については現在,論文にまとめている最中である.さらに,旗多様体は射影的代数多様体の構造ももち,その整係数コホモロジー環とChow環との間には自然な同型が存在する.このこととGrothendieckのRemarquesをもとに,複素単純Lie群SO(n),Spin(n),G_2,F_4のChow環が,R.Marlinにより1974年に決定されているが,残る例外型Lie群E_6,E_7,E_8のChow環については,旗多様体の整係数コホモロジー環の決定を待たねばならず,30年以上進展がなかった.これまでの旗多様体の整係数コホモロジー環の結果をもとに,この問題に取り組み,例外型の複素Lie群E_6,E_7,E_8のChow環の環構造を決定することができた.これらの結果は,International Conference on Algebraic Topology(10月,河南大学),ホモトピー論シンポジウム(11月,愛媛大学)にて発表された.また,これに関しては,旗多様体の整係数コホモロジーのBorel表示とSchubert表示との対応関係を明らかにし,幾何学的に意味のある生成元(Schubert部分多様体に対応するコホモロジークラス)を特定する作業に取り組んでいる最中である.現在,Bernstein-Gelfand-GelfandとDemazureにより導入されだ「差分商作用素」を利用して,SO(n),G_2,F_4の場合に,両者の表示の対応関係を明らかにすることができた.E_6,E_7,E_8に対しては,Weyl群の元を単純鏡映の積で表示し,差分商作用素を計算機上で計算するプログラムを考案中である.
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