Research Abstract |
3年ほど前より松浦(研究代表者)と齋藤(研究分担者)は,具体的な逆問題から再生核理論の精密化を図るとともに,現実的な計算アルゴリズムの構築を目指している.その経過の中で,特異性を回避しながら,漸近的に真の解に近づくチホノフの正則化法と再生核理論の統合を思い立った. そこで,我々はこの方法・手法を,非適切性などで従来解くことが困難とされてきた他の逆問題や変係数の常微分方程式,偏微分方程式にも適用して解の表現を得てきた.そして具体的に数値計算が可能なアルゴリズムを構築し,数値計算で具体的な解を得てそれをコンピュータ画面上に表示することによって我々の方法の新規性,汎用性,有効性を明らかにしてきた.特に従来,方程式の非適切性により解くことが困難とされてきた,医学や工学における複雑な境界値問題を具体的に現実的な時間内で計算できるアルゴリズムを開発し,斯学の逆問題開放のブレイクスルーを目指している. 特に解空間ペーリー・ウィーナー空間に限定した場合には,従来,非適切性等により解くのは不可能と考えられてきた様々な逆問題への応用が可能であることが判明している.既に幾つかの典型的な偏微分方程式や常微分方程式への適用は完成した. また我々は歴史的に難問とされてきた熱伝導における逆問題について,この方法を適用し,新しい陽表現公式を確立した.さらに,得られた逆公式を用いて,任意時刻に任意温度分布を持つための適切な初期温度分布を計算するアルゴリズムを開発し,コンピュータによる数値実験を行い,この方法とアルゴリズムの妥当性を確認することに成功した.この成功は大きな反響を呼んでおり,既に幾人かの外国の数学者が引用し,関連論文の執筆も始められている.我々がここで発見した方法には普遍性があり,一般の作用素方程式の新しい解法を与え,偏微分方程式や逆問題等には広汎に適用できるものである.
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