2009 Fiscal Year Annual Research Report
楠岡近似に依る拡散過程の数値計算の新しいアルゴリズムとファイナンスへの応用
Project/Area Number |
18540113
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
二宮 祥一 Tokyo Institute of Technology, 大学院・イノベーションマネジメント研究科, 教授 (70313377)
|
Keywords | 確率論 / 数理工学 / アルゴリズム / 数理ファイナンス / デリバティブ / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
X(t,x)を確率微分方程式で記述される拡散過程であるとし、fをm次元空間上に定義された適当な滑らかさを持つ関数とする。この時、E[f(X(t,x))]の値を求めることを確率微分方程式の弱近似という。確率微分方程式の弱近似問題は、現在、各方面で利用されている。特に所謂金融派生商品の価格付けは、X(t,x)を資産過程とした場合の弱近似問題そのものであるので、金融産業の現場ではこの計算が日々、膨大に行われていることになる。しかし乍ら、確率微分方程式のこれ程の利用が始まってからまだ歴史が浅いこと、近年の計算機の能力が達成される以前は、そもそもこのような計算が現実的には無理だった為にこの問題の研究があまりされてこなかったこと、などから、弱近似問題については未だ効率的な計算方法の研究の歴史は通常の微分方程式の数値解法の歴史に比べると甚しく短かいものである。本研究では、この弱近似問題について画期的な近似理論の確立とそれを実現するアルゴリズムの構築を目指した。昨年度迄の研究により、ヨーロッパ型オプションに対しては、より高次への拡張を含め、ほぼ理論とアルゴリズムは完成した。本年度は、更に困難と思われていた、境界値問題に帰着する場合、すなわち、バリアオプションのような経路依存型オプションの場合での高次近似のアルゴリズムと理論の構築に関して進展があった。この問題は非常に困難と考えられており、自明なモデル(BSモデル)以外の場合については研究の試みすら為されていないのが現状であるが、実務的には、このタイプのデリバティブの取引が急増しており、しかもそれらは本質的にBSモデルでは無い場合が重要である。その為、金融の現場においては大変に重要な問題になっている。我々は具体的には、[Ninomiya-Victoir(2008)]で示されたアルゴリズムをベースとしたアプローチで複雑なモデルの下でのバリアオプションの価格付け計算の高速化が可能であることを確認した。
|
Research Products
(1 results)