2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桑村 雅隆 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (30270333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栄 伸一郎 九州大学, 数理学研究院, 教授 (30201362)
小川 知之 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (80211811)
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Keywords | ハミルトン構造 / 散逸系 / パターン |
Research Abstract |
「勾配・歪勾配系」とよばれる反応拡散方程式は、ハミルトン構造という解析力学の基本的形式を備えている。例えば、散逸系のパターン形成の研究において代表的な方程式として広く知られているFitzHugh-Nagumo型の反応拡散方程式やSwift-Hohenberg方程式は勾配・歪勾配系であり、その分岐パターンの研究においては、解析力学の方法論が適用できる。本年度は、研究のスタートとなる年度であり、周期係数の線形ハミルトン系に関する基本的な問題を調べた。本年度に得た主な研究結果は、周期係数の線形ハミルトン系の非退化multiplierの挙動を特徴づけるKreinの公式とよばれるものを、2重に退化したmultiplierの場合に拡張できたことである。これは、周期係数の線形ハミルトン系の定義するモノドロミー行列のシンプレクティック性を利用して導かれるものであり、非退化な場合と異なりデリケートな議論が必要である。この結果は、東北大学の柳田教授との共著論文として、Journal of Differentiall Equations 230(2006)pp.446-464において発表することができた。 また、本年度は生態学の問題についても取り組んだ。ロトカ・ボルテラの捕食者-被食者モデルでは、被食者がロジスティック成長して捕食者がHolling II型の機能的反応を持つ場合、被食者の環境収容力が増加すると個体群ダイナミクスは不安定化することが知られている。すなわち、平衡点の局所安定性は失われ、安定な周期解が発生する。しかも、被食者の環境収容力が増加するにつれて周期解の振幅は増大し、非常に大きく変動するようになる。そのため、たまたま周期解が小さな値をとったとき、わずかな環境変動によって解の値が0になり絶滅が起きやすくなることが示唆される。この理論的な予測に基づいて、Rosenzweigは湖沼生態系における富栄養化の危険性を警告し、環境条件が良くなると絶滅が起きる可能性があるということから、この現象を「富栄養化の逆説」と呼んだ。この逆説を解消するための数理モデルを京都大学の仲澤氏、東京大学の霜田氏と共同で提案した。これは、京都大学数理解析研究所講究録に掲載されることが決定している。
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