2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540122
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐々木 徹 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (20260664)
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Keywords | 応用解析 / 微分方程式論 / 関数方程式論 / 感染症 / 免疫学 / 生態学 |
Research Abstract |
本年度は、感染症の体内レベルの動態を記述するモデルを主に扱った。連携研究者達との共同研究によって、常微分方程式モデルの定性的な性質に関する以下の結果を得ることができた。 1.未感染細胞、感染細胞、病原体、体液性免疫の4者の相互作用を記述する常微分方程式系に対して、感染が成立するという条件(基礎再生産率が1より大きい)のもとで、感染状態に対応する平衡点が大域安定であることを証明した。ここでは、ウイルス株がn種類の場合を主に扱い、免疫力の増加に関しては、免疫細胞が骨髄から供給される場合と、分裂して増える場合のふたつの場合を扱った。これは体内でのHIVの突然変異の影響を考察する研究の数学的基礎をなすものである。 2.感染により病原体が細胞に吸収される効果(以下、吸収効果と呼ぶ)を取り入れたモデルに関して、昨年度の研究結果を基に、内部平衡点の大域安定性に関する定理を証明した。ここで、扱ったのは未感染細胞密度、感染細胞密度、病原体密度、免疫力の4つの未知変数からなる常微分方程式系で、細胞性免疫に対するモデルと、液性免疫に対するモデルのふたつである。吸収効果と液性免疫を取り入れたモデルにおいては、内部平衡点が必ずしも安定になるとは限らないということが知られている。細胞性免疫モデルにおいても、吸収効果を取り入れた場合には、内部平衡点は必ずしも安定とはならないであろうと予想される。そこで、ここでは、内部平衡点が安定となるための十分条件を見つけ、その条件の下でLyapunov関数を構成した。ここで見つけた十分条件は、証明に必要となるテクニカルなものではあるが、このモデルの定性解析を一歩進めたものであると言える。
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Research Products
(4 results)