2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540122
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐々木 徹 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (20260664)
|
Keywords | 応用解析 / 微分方程式 / 関数方程式 / 感染症 / 疫学 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、体内レベルの感染症ダイナミクスの定性的な性質についての研究を行い、ある程度の結果を得ることができた。 1. 昨年度に得られた結果に対し発展、整理、検証をし、未感染細胞、感染細胞、ウイルス、免疫力の4種のエージェントからなる常微分方程式系の定性的な性質に関する結果をまとめた。この結果は、ウイルス株の数がnのときにも拡張することが出来る。これによりこのモデルにおいては、新しいウイルス株が感染に成功した場合に、システムが新しい平衡状態へ推移することが数学的に保証される。これは、HIVの数理モデルの研究において、ウイルスの空然変異による感染力や毒性の変化を論ずる上での基礎となるものである。この結果は雑誌、Journal of Biological Dynamicsに発表されている(現在は電子版のみ)。 2. 昨年度に得られた結果に対し発展、整理、検証をし、ウイルスが感染するさいにターゲット細胞に吸収される効果を取り入れたモデルの定性的な性質に関する結果をまとめた。このモデルは未感染細胞、感染細胞、ウイルス、免疫力の4つの未知変数からなる常微分方程式系で記述されるものである。ここでは、液性免疫を含むモデルと細胞性免疫を含むモデルの両方を扱ったが、特に細胞性免疫モデルの解析は難しく、内部平衡点の存在さえも明らかではない。吸収効果を取り入れた細胞性免疫モデルの解析を進めた意義があると思われる。この結果は雑誌、Journal of Biological Dynamicsに発表されている(現在は電子版のみ)。 3. 社会レベルの感染症ダイナミクスでは、重複感染を考慮したモデルの解析を行った。このモデルは複数株の病原体を対象とし、病原体の毒性の進化を論ずる際にも用いられるタイプのものである。本年度は、集団がロジスティック増殖により増加し、かつ感染クラスの個体や除去クラスの個体が集団の出生に影響しないという、特別な場合を考察した。この場合に、内部平衡点が存在するならばLiyapunov関数が存在することが分かった。また、株数が2の時にはLaSalleの不変原理が適用可能な事も分かった。
|
Research Products
(5 results)