Research Abstract |
(1) 量子エントロピーに関する研究 量子情報通信に関する数理的研究は,量子エントロピー理論,量子確率論などをその基礎として定式化されており,様々な量子過程における状態変化を量子チャネルで記述し,それらの状態変化における情報伝送の効率を量子系のエントロピーを用いて厳密に論じることを目的とする.大矢によって1983年に導入された量子相互エントロピーがあるが,近年,量子干渉性を用いた量子通信に関連して,コヒーレントエントロピー・Lindblad・Nielsenエントロピーなどの相互エントロピー型尺度がShor,Bennet達によって導入されている.本研究では,様々な量子過程に関して,量子相互エントロピーとその他の相互エントロピー型尺度を厳密に計算し,量子相互エントロピーの妥当性について議論を行った. (2) 量子系の力学的エントロピーに関する研究 古典系の力学的エントロピー(コロモゴロフーシナイエントロピー)の量子系への拡張の試みが,Connes-Stormer, Emch, Connes-Narnhofer-Thirring(CNT), Alicki-Fannes(AF), Ohya(Complexity), Accardi-Ohya-Watanabe(AOW), Kossakowski-Ohya-Watanabe(KOW)等によってなされている.本研究では、KOW力学的エントロピーの定式化を基に,入力にスクイズド光状態を用い,減衰チャネルと量子マルコフ過程によって構成された力学系に対して,一般化されたAOWエントロピーを計算し,入力状態の変化に対する,量子力学的エントロピーの振る舞いについて厳密に調べた.
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