2006 Fiscal Year Annual Research Report
偏微分方程式系に対する解の一意接続性・極限吸収原理とその応用
Project/Area Number |
18540173
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大鍛治 隆司 京都大学, 大学院理学研究科, 助教授 (20160426)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 修宣 立命館大学, 理工学部, 教授 (70066744)
|
Keywords | ディラック作用素 / スペクトル |
Research Abstract |
研究代表者大鍛治隆司は、1階楕円型偏微分方程式系の中でも数理物理学における重要な方程式である相対論的粒子の運動を記述するディラック方程式について、その定常作用素のスペクトル及び時間発展方程式に対する解の時間無限遠での漸近挙動について研究を行った。特に従来余り研究されて来なかった遠方で退化しないポテンシャルを持つ場合に着目し、まずそのスペクトルの絶対連続性について考察を行った。そのためのアプローチとしてMourre理論を適用することとし、最も重要なポイントである共役作用素の選択において、通常シュレディンガー作用素に対するものとは異なり古典的運動作用素に対する摂動形を採用することにした。その結果詳細な情報を抽出することが出来て、ポテンシャルが零次斉次である場合に、ディラック作用素のスペクトルが特異連続スペクトルを持たないことがわかった。また同時にその固有値が高々ポテンシャルから決まるある閾値にのみしか集積し得ないことが示せた。これらの固有値の非存在を示すことは初めの段階では困難を伴ったが、ディラック作用素と相対論的シュレディンガー作用素との関連に着目することにより研究を少し前進させることに成功した。即ちより取り扱いやすい相対論的シュレディンガー作用素に対するある重み付き評価式(極限吸収原理)に摂動法を適用することにより、ある特殊な条件下ではあるが元のディラック作用素に対する固有値の非存在を示すことが出来た。これらの考察を基礎にして、時間発展方程式の解の漸近挙動に対する予備的考察も行い、その結果、時間無限大で解はポテンシャルにしか依存しないある特定方向のみに集中局在化して行くことを示すことができた。この際、ある強い条件をポテンシャルに課す必要があり、この制限がどの程度本質的であるかは今後の研究課題の1つである。 一方研究分担者山田修宣は、スイスの研究者Monika Winklmeier女史との共同研究において、ブラックホールについてのKerr-Newmannモデルに現れるディラック作用素に着目し、その球対称作用素のスペクトル解析を行うことにより、ある特別な状況下では周期解が存在することを示した。
|
Research Products
(2 results)